「今日は雨だからコーヒーには味噌を入れましょう」と言われたら
もしも、晴れた日に「今日は雨だからコーヒーには味噌を入れましょう」と家人から言われたら、どうすれば良いだろうか。
「いや、今日は晴れている」
と言えばよいのか、
「天気が雨であることがどうしてコーヒーに味噌を入れる理由となるのか」
と訊くのか、
「味噌入りコーヒーは異常だ」
と諭すのか。
私はコーヒーに味噌を入れたことはないが、実際に試すまでもないだろう。
そもそもそれは「コーヒー」とは言えず、どちらかと言えば「味噌汁」と呼ぶべきものになる可能性も充分にある。
つまり家人の主張は、前提と、論理と、結論の、すべてがおかしい。(※1)
しかも、いずれを指摘されてもただ「雨が降っているからコーヒーに味噌を入れる必要がある」と持論を繰り返すばかりで、それが家人にとっては「丁寧に説明する」ということであるらしい。(※2)
・・・
近頃、こうした弁舌が日常に溢れていることに驚いている。
そしてマスメディアはこれを、「あなたはコーヒーに調味料を入れることに賛成ですか?」という問いにしてしまう。(※3)
このコミュニケーションの不調を前にして、どう応じればよいのだろうか。
photo:
PENTAX LX+planar50/1.4+PRESTO400 (self development)
・・・という次第で、この「コーヒー」とは何かについて、多くの人とシェアしたいと私が思うリンクを二つだけ紹介します。
↑
奈良弁護士会による、絵本「憲法って、何だろう?」の解説。
なんて平易で丁寧な語り口でしょう。
「丁寧に説明する」とは、正にこういうことではないでしょうか。
↑
『静かに「政治」の話を続けよう』(亜紀書房)より、著者の岡田憲治氏が一章分をまるまるweb公開されています。
ウィットに富んだ名調子に、思わず引き込まれます。
蛇足ながら・・
パロディを解説(してしまっては何のためにパロディ化したのか分からなくなりますが)しておきます。
「今日は雨だからコーヒーには味噌を入れましょう」
という主張と、
「あなたはコーヒーに調味料を入れることに賛成ですか?」
という設問は、
「今日は雨」→「現憲法はGHQに押し付けられたみっともない憲法」
「コーヒー」→「憲法」
「味噌を入れる」→「立憲主義をやめる」
「調味料を入れる」→「内容はさておき現憲法をとにかく変える」
とそれぞれ置き換えると、今のリアルな言論風景が立ち現れる仕組みになっています。(※4)
【注釈】こちらです↓
(※1)
このように矛盾点を二つ以上含んだ論法を、憲法学者の木村草太氏は「多矛盾系」と呼んでいます。
【憲法学で読み解く民主主義と立憲主義(1)】――「多矛盾系」としての集団的自衛権
(功一郎氏とのこの一連の対談も読み応えがあります)
(※2)
「今日は雨」という前提と、「だから」という論理に対しては、例えばこのような反論と批判があります。
明日の自由を守る若手弁護士の会: いまだに「押しつけ憲法論」とかいって…2015(リンク切れ)
(※3)
一例として。(2015.6.25追記)
なぜ読売新聞の世論調査では「安保法制賛成」が40%もいるのか? 回答誘導のカラクリ
(※4)
現政権の憲法観は以下の通りです。
日本国憲法改正草案(自民党HPにあるPDFファイル)
改正案についてのQ&A (自民党HPにあるPDFファイル)
その何が問題なのかについて、下記のサイトでは憲法の現行文と自民の草案を見やすく比較できるように、前文から1条ずつ全てがまとめられています。
自民党憲法草案の条文解説
by りき哉
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