「歴史も語法もまったく何も知らない音楽に出会うことの喜びは、いつもとても大きい。フラメンコの、少しでも奥深くに触れることができますように」
舞踏家(バレエとフラメンコ)・南沢博子さんのリサイタルに参加させていただくことになり、期待をそう日記に書き記したのは今年の6月のことでした。
私にとってフラメンコという音楽も踊りも、直に接するのはこれが初めてのことです。
そして、踊りと音楽をじっくりと練り上げていくためのリハーサルがスタートしました。
「11月の本番に向け、7月からリハーサルを重ねています。今日9回目のリハーサルで全体像が見えてきました。皆で一つずつ作っていくプロセスはとても楽しく充実しています」(9月5日)
「今日は通算15回目、2回目の通しリハでした。ようやくフラメンコの12拍子のリズムが自分の身体に少しずつ染み込んでくる兆しが見えてきたという(兆しに心躍ってます)」(10月18日)
「インド音楽をやっている人は拍を数える際に、小指から人指し指までの指の関節を親指で数えていくんだけど、フラメンコの人もそうやって数えるのだそう。へえ、そうなんだ、とお互いに驚いた。何よりも、リズムを円環的な周期として捉える世界観に、スペインとインドの深い繋がりを思う近頃」(10月22日)
「シンコペーションでシフトしたそのアクセントを頭として小節線を書き換えると、それはシンコペーションではなくなって、最もシンプルなリズムとなる。この、それはトートロジーでしょ、というあまりにも当たり前のことが、この数日に得た大きな気付き。(いや、既知の事柄でも『再発見』すると、それは以前よりもひと味深まっているんですよ。たぶん)」(10月25日)
「季節を跨ぎつつ自転車で通った白金台のスタジオに、ちょっと郷愁を覚える。7月から全18回に及んだリハーサルが今日で終了」(11月1日)
・・というわけで、いよいよ本番間近となりました。
この舞台はバレエとフラメンコとジャズダンスを取り入れた、南沢さんによる創作作品です。
音楽は、フラメンコギター、サックス&フルート、ドラム、ピアノ、という4人編成。
フラメンコだけでなく、ジャズやクラシックや、中東っぽいような無国籍な音楽もあり、どのシーンも濃密で楽しいのですが、私にとっての一大トピックは何と言っても初体験のフラメンコです。
自分なりの気付きを得つつ、リハーサルの最初期には雲に覆われて見えなかった未知の山の巨大さが、なんとなく実感できるようになってきました。(もちろん、見えてきた巨大な山の向こうに、もっと大きな山が幾つも連なっているであろうことも承知です)
簡単に言えばつまり、いよいよ楽しくなってきた、ということで。
新しい音楽との出会いは、己の世界を拡げてくれるだけでなく深めてくれるものだと、改めて感じています。
以下、公演情報です。
2012年11月8日(木)
HIROKO MINAMISAWA RECITAL VOL.7
バレエとフラメンコによる
Part1・・・Forest Scene
Part2・・・不思議の国のCafé


開演 ①15:00 ②19:00(開場30分前)
場所:東京「ル テアトル銀座」
東京都中央区 銀座1丁目11−2
全席指定 6,000円
踊り : 南沢博子
南リオ/山響康裕/松岡進一/ラルティグ優子
清水巴/長谷川真貴(SAクリエイティブフラメンコダンサーズ)
フラメンコギター : 鈴木尚
ドラムス : 長谷川清司
サックス&フルート: 加塩人嗣
ピアノ : 中村力哉
構成 : 南沢博子
演出 : 池田瑞臣
舞台美術 : 碇山喬康/森彩琳(草月会)
照明 : 斉藤香
衣裳 : 本柳里美/岩戸洋一/立川広子
音響 : 吉塚永一
舞台監督 : 依田直之
制作 : アンクリエイティブ
produce : SunArts
主催 : SAクリエイティブフラメンコダンサーズ
お問い合わせ・お申込み
アンクリエイティブ FAX:03-6721-7970/TEL:03-6721-7971(平日11:00-18:00)
E-mail:office@ancreative.net
SA事務局 FAX:03-3441-3890/TEL:03-3441-3853 (9:00-17:00)
公演情報(詳細)
公演パンフレット(PDFファイル1.53MB)
とても楽しい舞台になること請け合いです。
ご興味とお時間のある方、ぜひどうぞ。
【公演後記】
というわけで、舞台は無事に幕を閉じました。
振り返るとちょっと感慨深いものがあります。
上述の通り、個人的にフラメンコとの出会いはとても得難い経験でした。
この音楽体験は、もっと掘り下げていきたいところです。
南沢さん始め、フラメンコの南リオさん、ジャズダンスの山響康裕さん、バレエの松岡進一さんとラルティグ優子さん。
スタッフの皆さま。
そして、ミュージシャンの皆さま。
この度お世話になった方々に、心より感謝します。
記念に、共に音楽を担ったミュージシャンの写真を。
以下、いずれも本番前日(11/7)ゲネプロのサウンドチェックにて。
ドラムの長谷川清司さん。今回の「Part1・・・Forest Scene」では、全編に渡る南沢さんとのデュオという準主役級の大役を果たされました。この公演のために特注で作った金と銀の巨大ウィンドチャイムも、大きな存在感を放っていました。(写真のピントが合ってなくてスミマセン)
サックス&フルートの加塩人嗣さん。今回はカンテ(フラメンコの歌)をサックスやフルートで演奏するという難事に取り組まれ、見事にフラメンコの魂を表現されました。いつも朗らかな笑顔です。
そして、日本を代表するフラメンコギタリストの 鈴木尚さん。私(と加塩さん)というフラメンコ初心者にも(南沢さん、リオさんとともに)優しく丁寧にいろいろと教えてくださいました。鈴木さんの深い音色や力強い土着のリズムの凄さに圧倒されます。
写真3枚とも
PENTAX K200 + smcPENTAX DA 35mm F2.8 Macro Limited
by りき哉
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