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2012年5月23日 (水)

クルマのマドは手回しで


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私はクルマのパワーウインドウが嫌いだ。
「パワーウインドウ撲滅委員会」の委員長である。

クルマのマドは、手でノブをくるくる回す手動式がいい。

ところが残念なことに、近頃はどんな廉価車でもほとんどがパワーウインドウ仕様である。
ましてや、品格あふれる紳士の私に似合う高級な自家用車で手回しウインドウ仕様を求めることは、もはや絶望的な状況だ。(似合うからといって所有する縁があるとは限らないが、これは社会全体に関わる重大な問題であろう)

以前、私がクルマに乗り始めた頃(1980年代)はパワーウインドウはまだ本当の高級車にしか搭載されていなかったから、車外の人たちから「あのクルマはパワーウインドウだ」と思ってもらえるよう、肩を動かさずに、手首だけを使って、一定速度でスーッとマドを開閉する練習をしたものだが、それも今は昔である。

ついでに言えば私はAT車よりもMT車が好きで、(AT車を運転する機会も少なくないが)これまでに乗り継いだ自分の5台のクルマはすべてMT車である。
クルマを選ぶときの第一条件は「MTであること」で、第二条件が「ローズ・ピアノが積めること」だ。


AT車にくらべてMT車の良い点は、

1.燃費が良いとか(運転の仕方にもよるが)、
2.クルマの購入価格が安いとか(下取りも安くなるが)、
3.バッテリーが上がった時に「押しがけ」ができるとか(これは心強い)、

いろいろあるが、何よりも大きなポイントは、

4.自分の意に添った運転がしやすい

ということであろう。

そしてもう一点、

5.安全である

ということも付け加えておきたい。
AT車の誤操作による事故が毎年、繰り返しニュースになる。
ニュースに出ない小さな事故などは無数にあるに違いない。
(前進とバックのギアを入れ間違えるなど)何かの拍子にパニックになってブレーキとアクセルをまちがえて暴走する・・といったことは、MT車では起こらない。


さて、「MT車の方が好き」という人は(2012年現在もまだ)別段めずらしい存在ではない。
しかし、マドまで「手動がいい」と言うと、多くの人は「え〜?どうして?」という反応をする。
手回しウインドウの良さが理解できないらしい。
曰く、
「手でノブをクルクル回すのはめんどうくさい」
「手動では一人で運転しているときに運転席以外のマドの開閉が大変」
と。

なるほど。
自分のすぐ側にあるノブを回すのが面倒だという、そのうちに「自分で箸を持ってご飯を食べるのは面倒くさい」とでも言い出しそうな横着きわまりない意見は取り合うに値しないが、後者の意見に一理あることは認めよう。

しかしそれはしばらく脇において、手回しウインドウの数々の素晴らしさを以下に列挙してみたい。
その中で、後者の問題についても解決の糸口を提出することにしよう。


手回しウインドウの良い点は・・・


1.マド開閉の微調整がうまくできずにイライラすることがない。

「あとほんのちょっと、2ミリだけ開けたい・閉めたい」という時、パワーウインドウは行き過ぎたり戻り過ぎたりして、なかなか思い通りにいかない。
手回しならどんな微妙な位置にでも任意に即座にピタッと止められる。
ミリ単位はもちろん、訓練を積めばマイクロ、いや、ナノメートル・オーダーでの調整も可能かもしれない。


2.故障してマドが開かなくなったり閉まらなくなったりすることがない。

故障のリスクはパワーウインドウの方がはるかに大きい。
特に、(閉まったまま開かないならまだ良いが)開いたまま閉まらなくなった状態は、雨の日や冬の寒い日に辛いばかりでなく、防犯の上から駐車するにも困る。

実際、私が以前に(仕方なく)乗っていたパワーウインドウ車は二度も故障で操作不能になった。それで二度目の修理の際にお願いして、運転席だけ手回し式に改造してもらった様子が上の写真である。このクルマは「運転席のマドはクルクル手回し式でありながら助手席のマドはパワーウインドウで尚且つ運転席からも操作可能」という特別仕様になった。(写真を改めて見て欲しい)

これは上述の問題に対する、ひとつの有効な解となろう。(廉価車の中には「運転席だけパワーウィンドウで、他が手回し」という仕様のクルマがあるが、本末転倒であると言わざるをえない)


3.安全である。(重要)

パワーウインドウによる挟み込み事故は、後を絶たず起きている。
取り返しのつかない大事に至ったケースもある。
ニュースに出ない小さな事故などは数知れずあるに違いない。(事実、数年前に私がうっかり妻の指を挟んでしまって平謝りしたことは、公の事故データにカウントされていないはずだ)

異物を検知してマドが自動停止するような安全装置を取り付けても、それ自体の不具合リスクが付きまとい、決して安心することはできない。安全装置にかかるコストも、コストをかけても尚残る危険性や不安も、手回しウインドウには元より無縁だ。

さらには、万が一クルマが海に転落して、しかもガラスを割る器具がなかった場合、(電気仕掛けはショートして操作不能になるだろうが)手回しならマドを開けて脱出できる可能性がある(と思う)。


4.鍵を差さなくても操作できる。

これも重要な操作性だ。エンジンを切って駐車しているとき、いちいちパワーオンにしないで開閉したい場面は少なからずあるものだ。
ちょっとマドを開閉したいだけなのに、なぜわざわざキーを差してパワーオンにしなければならないのか。
(むしろ、室内灯やヘッドライトの消し忘れによるバッテリー上がり防止のために、それらをこそキーを抜いたらオフになる仕様にすべきではないのか)


5.マドの開閉が楽しい。

ピアノ演奏にしても、ボタンを押すだけで自動演奏されたところで何の喜びも感動もないだろう。
自ら身体と頭を使って弾くから楽しいし、技術の磨き甲斐もあるのである。




・・・などなど。

さあどうだろう。ちょっと考えただけでこれだけの利点がある。
もっとよく考えれば更に多くの利点があるに違いない。

言うまでもないが、何らかの身体障害を持つなど、その機構を必要とする人にとっての話は別である。(それはパワーウインドウに限ったことではない)

しかしそうでない場合、パワーウインドウに比したクルクル手回しウインドウの優位性は、もはや圧倒的であると言って良い。


近代、身の回りのあらゆるモノが、次々とオートマチック化している。
それらによって受けた大きな恩恵もあろう。
しかし、利便性と引き換えに、私たちは大切な何かを失ってゆく。

効率ばかりを追いかける生き方は、私たちの「本当の豊かさ」へ開かれていた繊細な感性を曇らせてきたのではないだろうか。
大量消費を是とし、経済第一主義に依拠し続けてきた社会通念を、何よりも真摯に省みるべきフェーズに私たちはいま立っているのではないだろうか。


・・・という大きな問題を、今ここで語ろうとしているのではない。

パワー・ウインドウは、「大切な何か」どころか、求めたはずの利便性すらも(上述のように)逆に失っているのだ。

科学技術の進歩はめざましく、AT車の販売台数がMT車を超えてから二十数年を経た現在、先行するクルマを自動追従したり、車線の逸脱や障害物との衝突を避けたり、・・・といった運転支援システムは、既に(高級な)市販車に搭載され始めている(らしい)。
安全性の向上や、渋滞の緩和などへ続くであろうその展望については、大いに期待したいところだ。

しかし、たとえクルマが将来、SF映画が描く世界なみに、行き先を口頭で告げれば寝ていても全自動で目的地まで連れて行ってくれるようなレベルまで進化したとしても、マドだけはクルクル回す手動式にするべきである。


自動車メーカー関係者には是非とも、手回しウインドウへの慧眼による然るべき再評価をお願いしたい。
(購入時にオプションでユーザーが選択できるようにしてくれれば、私ならたとえ価格アップであっても手動にしたい)

ちなみに「パワーウインドウ撲滅委員会」は発足から二十年ほど経っているが、会員数は現在、私を含め二名である。
会員随時大募集中。(※文末に追記)

尤も、なにもパワーウインドウを「撲滅」しなくても良いので、名称はもう少し穏やかに「クルクルマド推奨委員会」に改めても良い。

 (了)





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写真2枚目:素朴ながらも凛とした機能美を纏った手回しノブの静かな佇まい。
2012年5月17日 仙台のタクシーにて iPhoneで撮影。



by りき哉
(起筆 2005年頃 擱筆 2012年5月)



※【追記】(2013年12月23日)
その後、この記事を読んでくれた友人、あるいは面識のない方からも当委員会への賛同と入会申し込みを多数いただきまして、今日(2013年12月)現在、会員数は(私を含め)5名となりました。



これの後書きをアップしました。(2012年6月8日)
あとがき:「クルマのマドは手回しで」



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1: 随想録」カテゴリの記事

コメント

私の車に必要な快適装備はヒーターとシンクロだけです。
あとはなんにもいりません。
得ることでオミットされることはたくさんあるということを若い子には特に分かってもらいたい。
そこから本当の走る喜びと快適の恐ろしさを感じられるから。

近藤ゆうさん
コメントどうもありがとうございます。
「得ることでオミットされること」は、いろいろなことに通低しますよね。それでも「あった方が良いもの」や「あっても邪魔にならないもの」はたくさんあります。しかしパワーウインドウは、(「本当の走る喜び」といった高次元な話より以前に)「無い方が便利で快適なもの」であるように思うのです。

手回しだけでここまで語れるほど手回しが好きなんですね
確かに手回しの窓の方が機能的にはシンプルで美しいかもしれません

でもデロリアンみたいな車が手回しだったら笑えますね。

「ここまで語れるほど」とお褒めいただきまして恐縮しきりです。(え?褒められたのでなく呆れられた?)
手回しのデロリアン (タイムマシン)、ステキだと思います♪

お付き合いくださり、温かなコメントをどうもありがとうございました!
(気付くのが12日も遅くなりまして、失礼しました)


私も、私の父も、変速こそ自動ですが(私は手動変速の車が欲しいのですがね)、クーラーとヒーター、そして窓に関してはマニュアル派閥です。
クルクルウィンドウは微調整出来、安全、高い対障害性をもつ、という利点がある事には同意しかありません。人間が快適と感じるかどうかは、最終的には「気分」が決めるものです。そのあたりの気分に応じて微調整出来るクルクルウィンドウは実に良いものであると思います。
それとともに、オートエアコンというものを使ってみて、実に言うことを聞かない奴だと思いました。これについては、対障害性もへったくれもありませんが、「気分」で微調整できる、この部分が重要です。

このような記事を書いていただき、本当にありがとうございます。

嬉しいコメントをどうもありがとうございます!
まさに、自分の気分にピッタリと沿う操作ができることこそが「快適さ」ですよね。
なんだかいろいろなことに通じそうな話ですね。

「窓に関してマニュアル派閥」とのこと、ぜひ「クルクルマド推奨委員会」の会員としてカウントさせてください(笑)

まったく同感です! そんな理由で、変人扱いされながらも、あちこち修理してもらいつつ18年、MT くるくる窓の愛車を手放せないでいます。
願いがかなうなら、車体を残して 中身をあたらしくできないものか・・・

おお、18年も大切に乗っていらっしゃる、その理由がMT/クルクル窓なのですね。すばらしい!
嬉しいコメントをどうもありがとうございました。
愛車が末永く無事に走り続けられますよう念じています!

やはりパワーウィンドウ嫌いな方はいらっしゃるんですね。
私も同感です。
私、運転免許もっていません。妻の横である助手席に座っていまて・・・

20年以上前に有った丸っこいマーチはマニュアルウインドウでしたが、その後に買った車は全部パワーウィンドウに・・・カタログ上パワーウィンドウしかないんですね。

助手席にいると妻が降りている時とかキーOFFのとき、ウインドウは開閉できません。そして途中(中間)で窓を止めるのが難しいです。(完全に閉まるか完全に開くか)

ですので上下のスイッチをカチャカチャ繰り返しているうちに適当な場所で止まってくれますが・・・

パワーウィンドウ・・・不便なだけです。もしどうしてもパワー化したいならハンドルも同時に付いていると助かるんですけど。

g-horibataさん
パワーウインドウが不便なのは(運転する人にとってだけではなく)助手席の人にとっても同じですよね。
このように賛同のメッセージを(たまに)頂戴することがあると、とても嬉しく楽しいです。どうもありがとうございます!
ほんと、手回しウインドウの快適性が広く見直されることを願ってやみません(笑)

私はスズキのジムニーに乗っていますが、最近運転席側のパワーウインドウが故障しました。私も以前から中村様と全く同意見です。その理由も中村様と全く同じです。ジムニーは現在で2台目ですが、前のは中古で買った手動ウインドウ車でした。私はバックの際など必ず窓を開けて首を出して確認するので、パワーウィンドウが消耗しやすいのだと思います。オフロード対応のジムニーほどパワーウィンドウが似合わぬ車はないと思います。なのに、手回しのオプションはなく、新車を購入する際パワーウインドウにせざるを得ませんでした。
何とかもう一度メーカーには手回しの良さを見直してほしいと思います。

イクトミさん
賛同メッセージありがとうございます!
ジムニーほどパワーウインドウの似合わぬ車はない、まったくそうですね(笑) スズキには手回しウインドウ再評価を率先してほしいところですね。(そしてスバルが続いてほしいです。まずフォレスターで)

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