ピアノで織りなす岩手県民謡「釜石浜唄」
「一粒のちから(東北地方の民謡に和声を付けることで復興の力になれたらうれしい)プロジェクト」の第四弾です。
消えてしまった風景を呼び戻すために。復興を祈る私たち一人一人の想いに、この音楽が少しでも寄り添うことができたなら幸いです。
日本の民謡はもともと和声(という概念)を持たない音楽ですが、そこにピアノによるハーモニーを加え、受け継いできた伝統と文化を大切にしながら、新たな解釈とともにアレンジ・演奏しました。
この唄は、三陸漁業の水揚港として、また明治時代からは日本の製鉄業発祥の地として急速に繁栄した釜石の、沢村遊郭に生まれたお座敷唄です。
歌詞は大正初めに尾崎神社の宮司・山本茗次郎が改作したと伝えられ、花柳界に広く歌われるようになった俗曲風の民謡として貴重な存在となっています。
唄に出てくる尾崎神社は、奥の院が尾崎半島の先端に鎮座し、この地の海・漁業の守り神として、古く鎌倉期より以前から祀られてきました。
岩手県民謡「釜石浜唄」
奥で名高い 釜石浦は
いつも大漁で 繁昌する
おらが看板 朝日にかもめ
波にくじらの 浮く姿
時化を覚悟の 荒灘かせぎ
肌の守りは 尾崎神社(おざきさま)
(歌詞の注釈を本記事の末尾に記載しています)
故郷を想う気持ちは、未来へ向かう私たちの大きな力になると信じています。
この地で育まれてきた唄を後世へ伝えていくこと。
その力のささやかな一粒になれればと願っています。
この動画の演奏者
美鵬成る駒(唄)
佐藤錦水 (篠笛)
中村力哉 (和声付け・ピアノ・鍵盤ハーモニカ)
2011年8月14日 東京 Hocola Studio にて録音
動画の背景写真:
2011年4月、東京にて。
PENTAX LX + planar 50/1.4 + 400TMAX (self development)
[歌詞注釈]
一番の歌詞の「奥」は、資料によっては「奥州」と書いて「おく」と読ませているものもあります。
尾崎神社の宮司・佐々木裕基氏からは、これは「奥州」という意味ではなく、尾崎神社の奥宮のことを指している可能性が高いのではないか、とのお話もありました。
二番の歌詞の「看板」は、資料によっては「印伴纏」「印伴天」などの表記や、「甲板」と書いて「かんばん」と読ませているものも見受けられます。
「甲板」は恐らく、「看板」の誤りかと思われますが、これも定かではありません。
三番の歌詞の「尾崎神社(おざきさま)」または「尾崎様」は、ほかに「お崎様」の表記も見られますが、「崎」とは「海に突き出た土地」で、「海に突き出た場所には、海の神 が宿っている」という信仰が広くあるので、いずれにしても、この地の海の守り神である尾崎神社のことを唄っていると解釈できると思います。
[追記]
当プロジェクトの唄を、以下にまとめてあります。
その他の公開済みの唄
Pray for Japan ピアノで織りなす福島県民謡「相馬二遍返し」
Pray for Japan ピアノで織りなす宮城県民謡「十三浜甚句」
Pray for Japan ピアノで織りなす茨城県民謡「網のし唄」
【追記】(2015.11.30~)
● 温かなメッセージをたくさん頂きまして、2015年秋、CDアルバムの形にしました。
詳細はこちら。
● アレンジ(和声付け)について、少し言葉にしました。
「伝承と創出のあわいに」
● 当プロジェクトのwebsiteを作りました。(12/20)
awaibito.com
by りき哉
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