ありがとう RICOH XR-8 SUPER
(今回は単なるカメラ小僧の回想日記です。)
デジタルの一眼レフを購入してから、この1年半ほど、銀塩(フィルム)カメラの出番はすっかりなくなってしまっていた。
デジタル・カメラを買って受けた恩恵は、写真を撮る枚数が桁違いに増えたことである。
フィルムだと、撮れば撮るほど(フィルム代も、現像・プリント代も)コストがかかるのに対して、デジタルだと、撮れば撮るほど得をする(3万円のカメラで10枚だけ撮影したら1枚当たりのコストは3千円だけど、1万枚撮影したら1枚当たりのコストは3円になる)ような気がするからだ。
(それは比較の方法が間違っている、ということは解っているのだが、どうもそんな気になってしまうのである。)
フィルムは一枚撮るごとに、覚悟が要る。
シャッターを切る度に「これで30円かかる」とか思うので、ピンぼけとか、露出ミスがないようにすごく気をつけるし、被写体も吟味する。
(だから、貧乏性の私はなかなかシャッターが押せない。)
でもデジタルだと、失敗したら消去すれば良いし、とにかくバシャバシャ連写してあとから選べばいいや、という気分になりがちだ。
たぶん、どちらの姿勢も、それぞれ良い面と悪い面があるように思う。
・・・という、カメラの銀塩とデジタルを比べる話に深入りするのはまた今度の機会にして、表題の件に入ろう。
そう、銀塩カメラがずっと棚にしまわれたままだったので、たまには使ってあげようと先日散歩に持ち出したのである。
久しぶりに覗いたファインダーは、最近すっかり慣れていたデジタル一眼レフでの見え方とはまったく違っていて、ハッとするほど景色が大きく鮮やかに目に飛び込んでくるようだった。
「ああ、このカメラではこんな風に見えていたんだっけ」
と感慨を覚えながら、その日最初のシャッターを切ったら、
・・あれっ?
ミラーが戻らない・・・。
(だからフィルムも送れないし、次のシャッターも切れない)
ひょっとして・・壊れた??
機械というのはずっと使わないでいると調子悪くなるものである。
デジタルばかり使っていたのでカメラがヘソを曲げたのかもしれない。
修理に出したら直るのだろうか。
しかし、何千円か(1万円以上かも)の費用をかけて修理する価値があるか、と考えると、とてもそこまではできないように思われた。
思い返すと、もう20年ほど前になるが(私は20代の前半だった)、友人にニコンのFM2を触らせてもらったのが、私のカメラとの出会いだった。
露出計の指針を見て絞りとシャッタースピードをセットし、ピントを自分で合わせて写真を撮る・・という一連の作法をその友人から教わったときの興奮を、今でもよく覚えている。
それまでは、カメラにも写真にもまったく興味を持っていなかった。
そして、それから数年後(おそらく1994年)に自分で購入した初めてのカメラが、この(今回壊れたと思われる)リコーの一眼レフ「XR-8 SUPER」であった。
(ニコンのFM2は高くて、ちょっと手が出なかった。)
このカメラのボディ価格はニッキュッパ(29,800円)。
当時、一眼レフカメラの中では最も(しかも格段に)安かった。
本格的にカメラを趣味にしている人からみたら、おもちゃみたいな値段で作りもそれなりのチープさだったが、それが自分に相応しく思えたし、私は「メカニカル・シャッター」であることが、とても気に入っていた。
もちろん、オートフォーカスもない、自動露出制御もない、完全なマニュアル・カメラである。
また、リコーがKマウントであったことは、私がその後ペンタックス党に進むことを決定づけもした。
カメラと一緒に買った標準ズームレンズをしばらくつけていたが、ある日、中古でペンタックスの「50mm/F1.4」を1万円で入手し、それからはずっとそれをつけっぱなしにした。
F値の暗いズームよりも、明るい単焦点のレンズの方が、撮っていて気分が良かったのだ。
そして、旅行に行く時はいつもこのカメラを持って行くようになった。
2001年ころから数年間に渡って、客船で演奏する仕事をたくさんしていたので、いろいろな土地をこのカメラで写真に撮った。
太平洋の島々・・グアム、サイパン、ニューカレドニア、ケアンズ(オーストラリア)、オークランド(ニュージーランド)、タヒチ、サモア、パラオ、ハワイ・・などなど、それから、サンフランシスコ、シンガポール、コーチン(インド)、アレキサンドリアとカイロ(エジプト)・・・などなど。
・・それに、上陸しているよりはるかに長い時間を過ごす、360度水平線の洋上。
そういった沢山の旅の思い出とともに、このカメラはある。
散歩から戻って、リコーのサービスセンターに問い合わせたら、やはり点検するだけでも6千円くらいかかるとのこと。
自分でミラーをゆっくり押し戻してみる、という方法も教わって試したのだけど、症状を改善することはできなかった。
ついにこの盟友も現役を退くときが来たのかも知れない。
せめてウチのショーウインドウ(に見立てた本棚の一角)に、その栄誉を称えて置いておくことにしよう。
いままで、どうもありがとう、RICHO XR-8 SUPERくん。
(露出やら被写界深度やら・・といった)写真のイロハはもちろん、何よりも写真を撮る楽しさを、私は君からたくさん教わったよ。
トップの写真はその盟友「RICHO XR-8 SUPER」(とペンタックスの50mmレンズ)。
ペンタ部分には(購入してまだ間もない頃にピアノの上から落として)ヒビが入っているし、「使い込まれた道具の『味わい』」と言い張るには無理があるボロボロさ。
50mmのレンズもカイロの街中で落として鏡胴が曲がったりしたけど、こちらはまだ使えている(デジタルの方でも使っている)。
下は、船旅で撮ったたくさんの写真の一部、つまり「写真の写真」。
(ぜんぶサービス判サイズ)
そして話は、「ようこそ!PENTAX LX」に続く。
by りき哉
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