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2010年3月30日 (火)

音楽警察隊

妻がTSUTAYAで映画のDVDを借りてきたと言うので、何を借りたのか訊いたら
『迷子の音楽警察隊』
だとのこと。

えっ?・・音楽警察隊??
なんだそれは?
私は初めて聞くその言葉に鋭く反応した。

「鉄道警察隊」や「湾岸警備隊」といった言葉に比して、「音楽」と「警察」というまったく不釣り合いな言葉が連結したことによる違和感と、その不思議な滑稽さ。

鉄道警察隊は鉄道の、湾岸警備隊は湾岸の、安全と治安を守ることを使命としている。
・・ということから類推すると、音楽警察隊は、音楽の安全と治安を守ることを使命とする機関であるに違いない。
そして、その主な任務は、音楽(音楽ビジネスではなくて、音楽そのもの)における犯罪を取り締まることであると思われる。

つまり、彼らは警察官の制服を着ていて、ホイッスルを手に、
「ピピーッ!こらこら、そこのメロディにそのコードを弾いちゃいかん!」
とか
「ピピーッ!こらこら、その曲を7拍子で演奏するのは拍子違反だぞ!」
などと言って、音楽を取り締まり、違反者から罰金を徴収したりするのだろう。
年間取り締まり件数が最も多いのは、おそらく速度違反である。

音楽警察隊は、ミュージシャンから音楽における表現の自由を奪う、許し難い存在だ。
しかし一方、音楽警察隊には音楽に対する極めて高度かつ広範な知識と技術が求められる。
コード進行違反者が代理コードで罪を逃れようとするのを追跡したり、拍子違反者が7拍子であることを隠すために7拍2連だけで演奏していることを見破る強靭な音楽力を備えていなくてはならない。
腰には警棒の代わりに横笛(竜笛や能管)を差し、先鋭的な音楽をレパートリーとするフルオーケストラなど巨悪な犯罪組織にも笛一本で立ち向かう勇気と、それを制圧する演奏技術が必要だ。

音楽警察隊の隊員であることは、世界中のあらゆる音楽について演奏技法や作曲技法からその歴史や美学・思想・哲学に至るまで深く精通していることの証であり、ミュージシャンの敵であると同時に、音楽家としての理想像でもある。

私は妻に
「おれ、音楽警察隊の隊長になりたい」
と言った。
「・・ふーん・・」
妻は、その奥深い意味を掴みかねて戸惑ったようにそう一言だけ答えて続けた。
「そこにDVDあるよ」

テーブルの上にあった袋からDVDを取り出してタイトルを確認すると、
『迷子の警察音楽隊』
だった。


おい、ぜんぜん違うじゃないか。


・・まあいい。

「消防音楽隊」とか「Army Band」という言葉を瞬時に連想できず、妻の言い間違いである可能性に気付けなかった私の方が不覚であったのかもしれない。

ビッグバンのごとく膨らんだ音楽警察隊のイメージは行き場を失い、瞬く間にフェードアウトしていった。

・・気を取り直して、近々(返却予定日以内)に観てみよう・・『迷子の警察音楽隊』。

by りき哉




2010年3月27日 (土)

スタンダード・アルバムであるということ〜秋元順子「encore」リリース〜

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3月24日、秋元順子さんのジャズ・スタンダード・アルバム「encore」が発売となりました。
(私はこのアルバムの中の4曲にアレンジャー&ピアニストとして参加しています。過去ログ「秋元順子ジャズ・アルバムのアレンジとレコーディング」参照)

ジャズ・ミュージシャンにとって、スタンダード・ナンバーのアルバムを作ることは特別な意味があります。

スタンダード曲であるということは、その曲が今まで世界中でさまざまに歌われ、さまざまに演奏され、さまざまにアレンジされてきた、ということ。
そして、そういうさまざまなバリエーションが多くの人々に聴かれ愛されてきた、ということ。
曲はそのオリジナル(たとえば映画やミュージカルで公開された時の)バージョンを離れ、さまざまな形に発展しながら、スタンダードとなります。

過去のたくさんの名演・名アレンジが充分に皆に聴かれているところへ、その曲に自分独自の息吹を吹き込み、その曲の新たな切り口や味わいを提出する、というのは大変な勇気と覚悟が要ることであり、ただ単に「この曲が好きだから」というたわいない動機(は大切ですが)それだけで録音できるものではありません。

その曲を音楽家(歌手、ミュージシャン、アレンジャー)がどう解釈しどう料理したか。
・・ということに注目(じゃなくて注耳)し、その曲のさまざまなバリエーション、つまり音楽家による(歌唱や演奏やアレンジの)違いを楽しむことは、ジャズ・ファンにとってスタンダード曲を聴くときの大きな楽しみの一つです。
「ジャズは『曲』を聴くのではなく『演奏』を聴くものだ」というよく言われる台詞が伝えようとしていることには、多分にそういうことが含意されていると言って良いでしょう。

スタンダード・アルバムであるということは・・・収録した曲が世界中のいろいろなバージョン(いろいろな人の歌唱・演奏・アレンジ)と直接比較される、そういう土俵に上がるアルバムである・・・ということなのです。

そういう意味で、順子さんのこのアルバム(の中の4曲)にアレンジャー&プレイヤーとして参加することは、私にとってもチャレンジングな仕事でした。
今回の機会をとても嬉しく思っています。

そして、今までジャズに馴染みのなかった方々がこのアルバムをキッカケにジャズに興味を持って頂けたら、それはますます冥利に尽きることだと思っています。
(このアルバムの収録曲が知らない曲ばかりであったとしても、もちろん何も心配することはありません。その音楽を純粋にあるがままに聴けばよいことですから。・・なんて、いわずもがなですね。)

順子さんの声・歌唱の素晴らしさは、とても素直に自然に歌い上げた今回のスタンダード曲たちに於いても(ますます)冴えています。

「encore」は、ジャズ・ファンにもそうでない方にもぜひ聴いて欲しいと思える、音楽的内容と心地よさを併せ持ったアルバムに仕上がりました。
ジャズ・ヴォーカル・アルバムとして多くの方に永く愛聴される作品たりうるのではないでしょうか。
皆さま、ぜひぜひ(お手に取って)聴いて浸ってみてくださいね。

アルバム収録曲など詳細は、順子さんのオフィシャル・サイトをどうぞ。
http://www.apc-brain.co.jp/junko-album.html

このアルバム・リリースを機に、今年は順子さんのジャズ・ライブが予定されています。
第一弾は、6月21日(月)、東京・六本木「STB」にて。
サポート・メンバーは今回のレコーディングでの私のトリオ(bass マーク・トゥーリアン、drums 今野大輔)と、それにたぶんサックスを加えたカルテット編成になる予定です。
今からとても楽しみです。

by りき哉

2010年3月21日 (日)

出帆 bando-band号(3/28追記あり)

ライブ後記を追記しました(3/24)
この記事の下の方です。
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bando-band ライブが間近になりました。
なんだかいつもにも増してワクワクしています。
とてものびのびと音で絵を描けるような気がして。
(やってみないとわからないけど)

今回はパーカッションに浜野律哉さんを迎えます。
彼とは十何年かぶりの共演。
それもとても嬉しく楽しみなこと。

今回のライブ・タイトルは
「出帆bando-band号 時空航海 LIVE!」
です。

東京近郊の方、お時間ありましたらぜひお運びくださいませ。

2010年3月23日(火)
19:30スタート
charge¥2500

bandoneon 大久保かおり
piano    中村力哉
bass    マーク・トゥーリアン
percussion 浜野律哉

於:中目黒「楽屋
東京都目黒区上目黒2-15-6
TEL 03-3714-2607

Voyageweb
イラスト:大久保かおり

bando-bandって何?・・という方はこちらをどうぞ。
bando-band 1st CD 出来た!
bando-band website


追記(3/24):ライブ後記

今回もたくさんの方にお越し頂きました。
みなさま、どうもありがとうございました!
中でも今回は妊婦の方がお二方いらしたことは(しかもお一人は出産予定日が来週という・・!)、何だかとても嬉しいことでしたね。おなかの赤ちゃんにも生(なま)の音楽を届けられるということや、新たな命の誕生という強力なエネルギーがあの空間に満ちている感じとか・・・。
おなかの赤ちゃんもライブ楽しんでくれたかな?

・・で、ライブ前に(この記事冒頭で)予感していたことは的中したのか?
まあもちろん個人的反省点はいつものように多々ありつつも、大きくのびのびと絵を描く心がけを一貫できたとは思います。
あ〜、でももっともっと柔らかく優しく、熱く鋭く、モノトーンでカラフルな絵が描けるようになると思っています。そうなるようにこれからも精進します。
(練習したいことが山積しています)

パーカッションの浜野律哉さん、楽しくてゴキゲンでした。
「バタビアの月」で叩いたウォータードラムもステキでした。
(ウォータードラムは私は初めて見ました。)
次回も楽しみです。

追記(3/28)
次回ライブが決定しました。
6月3日(木)@渋谷「公園通りクラシクス」
7月5日(月)@中目黒「楽屋」
です。
詳細は近くなったらLIVEの予定に掲載します。

by りき哉

2010年3月14日 (日)

秋元順子 at NHK Hall 2Days

3月10日と11日、東京・NHKホールで二日間にわたった秋元順子さんのスペシャル・コンサートが無事に終了。

3500人のホールは両日とも満員御礼で、いつものバンド編成にストリングス・セクションやサックス・セクション、それにパーカッションを加えた特別編成で臨んだステージは、華やかに、とても楽しく熱いパフォーマンスができたと感じています。

とくに、今回3-2-2-2(9人編成)のストリングスが加わったことで、先日レコーディングした「Besame Mucho」のストリングス・アレンジがライブで再現できたこと、そして「Misty」にもストリングス・アレンジを加えられたことなどは、音楽面でとりわけ(個人的に)楽しかったことの一つ。

いろいろな面で「スペシャル」であることを堪能できた二日間で、4月からスタートするコンサート・ツアーに向けて良い弾みがつきました。

今年のツアーではどんな風に音楽を拡げたり掘り下げたりできるか、とても楽しみです。

Img_4520_2
リハーサルでのスペシャル・バンドの風景
ピアノの左手上段にストリングス・セクションが並んでいる。

Img_4523
リハーサル中、気合い充分の様子(か?)
順子さんマネージャーのK.Tさんに撮って頂きました。
3月11日 於:NHKホール

by りき哉


2010年3月 2日 (火)

自由さを模索する或る日の一コマ

先日(2/16)の、横浜エアジンでのTakao Band ライブ。
その映像が「エアジンYouTube」にアップされていた(ことに気づいた)ので、ここにご案内しておきます。

こちら。(映像は10分間ほど)
http://www.youtube.com/user/MrAiregin#p/u/17/fbTeMrOkW6c

曲はスタンダード中のスタンダードですが、イントロはピアノのフリーソロ(即興)から始まっていますね。

「〜いますね」・・って、他人事のような言い草ですが、2週間ぶりに自分の演奏を聴くと、自分でも何をしたのかすっかり忘れているので、「ふ〜ん、君はこんなことやったのか」という感じなのです。

オーソドックスなジャズのフォーム(形式)を踏襲しつつ、その中でどんな風に自由になれるか。
それが、私にとっての・・このバンドのメイン・テーマです。

しかし自由って、自由になろうとすればするほど固くなって不自由になったりもする。
枠組みを取り払うことばかりが自由ではなくて、ある枠組みの中に留まりながらとても深く自由になれることもある。
拡げたり、飛躍したり、掘り下げたり・・
いつでも自然体で柔軟に体現できるようになりたいものだ。

・・・ということを改めて、この映像を観て思いました。
まあ、これも或る日の自分の一コマであるので、いろいろ見える反省点のそれはそれとして(肝に銘じながら)受け入れ、精進を己に誓うばかり・・・ですね。

このイントロ(冒頭1分過ぎくらいまで)でやっていることは、以前「音楽を深く感じるために」に書いたこととも関連深いので、興味のある方は参照してみてくださいませ。

ちなみにリーダーのタカオさん(drums)は、これはまだライブの1曲目だから(なのか)全部ブラシで叩いていますが、この後はもちろんスティックで大炸裂していることを(このバンドをご存じない方のために)念のため補足しておきます。。。

by りき哉

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