スタンダード・アルバムであるということ〜秋元順子「encore」リリース〜
3月24日、秋元順子さんのジャズ・スタンダード・アルバム「encore」が発売となりました。
(私はこのアルバムの中の4曲にアレンジャー&ピアニストとして参加しています。過去ログ「秋元順子ジャズ・アルバムのアレンジとレコーディング」参照)
ジャズ・ミュージシャンにとって、スタンダード・ナンバーのアルバムを作ることは特別な意味があります。
スタンダード曲であるということは、その曲が今まで世界中でさまざまに歌われ、さまざまに演奏され、さまざまにアレンジされてきた、ということ。
そして、そういうさまざまなバリエーションが多くの人々に聴かれ愛されてきた、ということ。
曲はそのオリジナル(たとえば映画やミュージカルで公開された時の)バージョンを離れ、さまざまな形に発展しながら、スタンダードとなります。
過去のたくさんの名演・名アレンジが充分に皆に聴かれているところへ、その曲に自分独自の息吹を吹き込み、その曲の新たな切り口や味わいを提出する、というのは大変な勇気と覚悟が要ることであり、ただ単に「この曲が好きだから」というたわいない動機(は大切ですが)それだけで録音できるものではありません。
その曲を音楽家(歌手、ミュージシャン、アレンジャー)がどう解釈しどう料理したか。
・・ということに注目(じゃなくて注耳)し、その曲のさまざまなバリエーション、つまり音楽家による(歌唱や演奏やアレンジの)違いを楽しむことは、ジャズ・ファンにとってスタンダード曲を聴くときの大きな楽しみの一つです。
「ジャズは『曲』を聴くのではなく『演奏』を聴くものだ」というよく言われる台詞が伝えようとしていることには、多分にそういうことが含意されていると言って良いでしょう。
スタンダード・アルバムであるということは・・・収録した曲が世界中のいろいろなバージョン(いろいろな人の歌唱・演奏・アレンジ)と直接比較される、そういう土俵に上がるアルバムである・・・ということなのです。
そういう意味で、順子さんのこのアルバム(の中の4曲)にアレンジャー&プレイヤーとして参加することは、私にとってもチャレンジングな仕事でした。
今回の機会をとても嬉しく思っています。
そして、今までジャズに馴染みのなかった方々がこのアルバムをキッカケにジャズに興味を持って頂けたら、それはますます冥利に尽きることだと思っています。
(このアルバムの収録曲が知らない曲ばかりであったとしても、もちろん何も心配することはありません。その音楽を純粋にあるがままに聴けばよいことですから。・・なんて、いわずもがなですね。)
順子さんの声・歌唱の素晴らしさは、とても素直に自然に歌い上げた今回のスタンダード曲たちに於いても(ますます)冴えています。
「encore」は、ジャズ・ファンにもそうでない方にもぜひ聴いて欲しいと思える、音楽的内容と心地よさを併せ持ったアルバムに仕上がりました。
ジャズ・ヴォーカル・アルバムとして多くの方に永く愛聴される作品たりうるのではないでしょうか。
皆さま、ぜひぜひ(お手に取って)聴いて浸ってみてくださいね。
アルバム収録曲など詳細は、順子さんのオフィシャル・サイトをどうぞ。
http://www.apc-brain.co.jp/junko-album.html
このアルバム・リリースを機に、今年は順子さんのジャズ・ライブが予定されています。
第一弾は、6月21日(月)、東京・六本木「STB」にて。
サポート・メンバーは今回のレコーディングでの私のトリオ(bass マーク・トゥーリアン、drums 今野大輔)と、それにたぶんサックスを加えたカルテット編成になる予定です。
今からとても楽しみです。
by りき哉
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今回の作り手(送り手)としての熱いお気持ちが
痛いほどひしひしと伝わって参りました。
スタンダードアルバムを作るということは
そういうことだったのですね・・・・・
六本木のSTBでは演奏なさる由嬉しいです。
当日はくじ引きで決まるどこかの席から
順子さんの歌とともに聴かせていただきます。
投稿: ミハルカス | 2010年3月28日 (日) 01時53分
ミハルカスさん
今回は「ジャズ・スタンダードの楽しみ方・入門編(の前書き)」みたいな記事を目指してみました。
音楽の聴き方(音楽の何を聴くか)は人それぞれで、正解などあろうはずもありませんが、(何事にも言えることでしょうけども)ある音楽をさまざまな切り口から捉えることは、それをより深く感じることの一助になると思います。
それで、これを読む人に解りやすく、と心がけながら書いていたら長文になってしまいました。
(その結果「送り手の熱い気持ちが痛いほどひしひしと伝わる」ことになったのはちょっと想定外で、「気持ちの押し売り」になっていなければ良いのですが・・笑)
6月のSTBライブには定員を遥かに上回る応募があった様子ですが、いらっしゃれることが確定したのでしたら、それはおめでとうございます!
当日をご期待くださいませ。
これからも応援どうぞよろしくお願いします。
投稿: りき哉 | 2010年3月28日 (日) 04時21分
ミハルカスさんのご案内ですぐ飛んできました。
毎日毎日聴き続けています。
中村さんの文章はジャズ初心者の私にもとても解りやすく、またひとつ違う聴き方が広がります。
6月21日のライブには以前コンサートでのアレンジに感激した友人と一緒に行きます。
友人は中村さんのピアノ、アレンジ大ファンです。
健康にお気をつけてお過ごしください。
投稿: うさぎ | 2010年3月28日 (日) 12時47分
うさぎさん
うれしいメッセージどうもありがとうございます!
ジャズ・ライブもコンサートも応援よろしくお願いします!
投稿: りき哉 | 2010年3月28日 (日) 13時17分
ジャズはあまり好きでは?なかったのですが
今回のアルバムを聴いて沙羅ははまってしまい
ました。 特に力哉さんのピアノ大好きな私は
毎回毎回同じ曲を聴いたり・・子守唄の様に
眠りにつきます~~ 田舎では上京する機会が
少なくコンサートにはいけませんが7月の松山に
は行きます。。 力哉さんのライブも愛媛でやっ
てもらえれば幸せですが・・・・・o(*^▽^*)o
6月21日は順子さんのバースデーですね!
投稿: 沙羅。 | 2010年3月30日 (火) 08時50分
沙羅さん
どうもありがとうございます!
「ジャズは好きではなかったけどハマって・・」というのは、しめしめ・・そうでしょ?!という感じで嬉しいです(笑)
スタンダード曲の魅力と順子さんの魅力が合わさったアルバムですからね。
自分のライブも愛媛でできたら何と素晴らしいことでしょう・・。
6/21は、そう!バースデー・ライブですね。
投稿: りき哉 | 2010年3月30日 (火) 20時45分
初めまして Jazzが好きな ファンです。encore素晴らしいですね。三人のアレンジャーの個性に乗せて、なんとシンプルに そして 所々に順子さんらしさのフレーズが、ちりばめられて・・・・皆さんがおっしやる、いつまで聴いていても、飽きないって 素晴らしい事ですね(歌も 演奏も)そして、りき哉さんの アレンジ、ピアノ・・・・・コンサートで楽しみにしています。
投稿: 志乃 | 2010年3月31日 (水) 06時34分
志乃さん
初めまして。
そうですね、シンプルな中にいろいろな個性がでていますね。
また、曲ごとに楽器編成もいろいろですから、ジャズ・アルバムとしては変化に富んでいる、とも言えますね。
永く愛聴されることは何より素晴らしいことだと思います。
今後とも応援よろしくお願いします!
投稿: りき哉 | 2010年3月31日 (水) 22時06分
初めてコメントさせて頂きます。
でも・・何時もそっと寄らせて頂いてます。(笑)
秋元順子さんのコンサートでは素敵な演奏を
聴かせて頂いて・・ありがとうございます。
昨年は3回お会いしていることになります・・。
ここを訪問するようになってから・・コンサートの
楽しみ方がまた増えて嬉しい思いです。
ジャズアルバムへの思いも伝わってきました。
この~encore~・・聴き飽きることなく・・
聴き続けています・・。
6月21日のジャズナイト・・私も聴きに行きますので
力哉さんのピアノ・・期待しています。
投稿: さくら | 2010年4月 6日 (火) 16時15分
さくらさん
どうもありがとうございます。
encoreの末永い愛聴と、コンサートやジャズライブでの応援、これからもどうぞよろしくお願いします!
投稿: りき哉 | 2010年4月 6日 (火) 21時50分