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2008年4月23日 (水)

新郎当てクイズのピアニスト版

(記事文中に音楽再生ボタンがあります)

ピアニストの友人・えぐりんの結婚披露パーティに参加した。
えぐりんとは、今から10年以上前になるが、2年間ほどにわたって伊藤多喜雄バンドで数々のコンサートツアーを共にした盟友である。

一月ほど前にパーティの招待を頂いて、喜んで出席しますとお返事をしてから何日かして、「パーティでの新郎当てゲームに参加してほしい」という電話を頂いた。

新郎当てゲームは、目隠しをした新婦が何人かの人と握手をしてどれが新郎かを当てるという、とてもポピュラーなゲームである。
今回、これのピアニスト版をやりたい、という。
つまり、新郎を含む数人のピアニストが同じ曲を演奏し、どれが新郎の演奏か新婦が当てるゲームである。
そして、もしも新婦の答えが間違いだった場合、その間違えられたピアニストは豪華景品(「任天堂Wii」か「iPod touch」)をもらえる、という話だ。
・・それは面白い。

課題曲はワーグナーの結婚行進曲。
これをそれぞれ独自の解釈に基づいて自由に、2分以内で演奏して欲しいという。
景品をもらうにはなるべく新郎と似た傾向のアレンジ・演奏をした方が有利なわけだが、「いや、自分は自分の味で演奏したい」というのもアリで、その辺は自由にどうぞ、とのこと。

もちろん快諾。
景品が iPod touch だったら是非欲しいなぁ。さて、どう料理したらえぐりんっぽくなるだろうか。
しかしちょっと(5分くらい)考えて、すぐに景品を取りに行くという野望は諦めることにした。
もしも私が新婦の立場だったら、もう絶対に間違えっこないというほどに、彼と私のタッチは全く違う。彼のマネをするのは至難である。
私は私なりにやることにしよう。
しかし待てよ。新婦の音楽を聴く耳については未知数だ。どんな人だろうか(テレビ局のアナウンサーとのことである)。
十中八九ないにしても、あるいはひょっとすると、私に間違えてくれる可能性もゼロではないかもしれない。
えぐりんの音楽性はクラシックからジャズから歌謡曲から民謡やら実験的なものやアバンギャルドなものまで恐ろしいほど幅広いので、アレンジの方向性としては幕の内弁当的にやってみよう。
最初はルバートで、サビから5拍子にして、一瞬だけモーツァルトの練習曲のようにやって、サビ後はラテンにして、さらにブギウギにして盛り上がって終わる、という流れでいく作戦を立てた。これで時間はぴったり2分。
全体的にサウンドはジャズっぽくなりすぎないように、なるべくクラシックっぽさを残すように心がけよう。
何より一番気をつけなければいけないのは、演奏中に唸り声を上げないことだ。
えぐりんは、そして他のピアニストはどんな演奏をするだろうか。

さて、会場は六本木のSTB。
パーティは案の定、彼の音楽性を反映して幅広いジャンルのミュージシャンが集まっていた。
素晴らしくクオリティの高いパフォーマンスが次々と繰り広げられる。

新郎新婦がお色直しで再入場して場の空気も心機一転したところで、いよいよゲームとなった。
題して「ピアニスト聴き比べ大会。新郎は誰だ!?」(だったかな?もうちょっと長いタイトルだったかも)。
私が最初に呼ばれてステージへ。
二人目は、お互いに活動フィールドの共通する部分も多く、面識もあるアビル竜太氏だった。
三人目は、既に目隠しをした新婦には正体を秘密にして新郎のお父さんが壇上へ。
えぐりんのお父さんはスタジオ系などでもバリバリベテランのジャズピアニストである。
演奏する順番はジャンケンの結果、新郎えぐりん、お父さん、アビル氏、最後に私。

私はこの時点で、他の三人がどんな演奏をするか、本当にワクワクして楽しみで仕方がなかった。

えぐりんの演奏は、やっぱりえぐりんらしい、力強く素晴らしい演奏だった。
結婚行進曲のメロディなんて時々ちょっと顔を出すくらいで、とても自由に壊している。
そうか、そこまで壊してきたか。
会場は拍手喝采。

お父さんは、平然とした顔で最初から全然関係のない古い歌謡曲(だと思う)を弾きだした。可笑しくって会場からも笑いが起こる。
まったく脱帽である。この肩すかしの技。与えられた課題などどこ吹く風。
年の功だろうか。それともご本人の天然の芸人性なのだろうか。余裕があると言うべきか。流石というほかない。
このユーモアセンスに、私は多いに学ばなくてはいけないだろう。
きっとあらゆることに通じる「懐の深さ」みたいなものではないだろうか。
演奏の後半では、ちゃんと課題曲の一部分を弾いて締めくくった。
会場は拍手喝采。

アビル氏は、かなりアグレッシブで自由な演奏。最初のえぐりんと同様、テーマメロディなどあまり弾かない。ジャズ的な解釈で、カッコいい男らしい演奏だ。
会場は拍手喝采。

そして私。ピアノの前に座ったけど、前の三人のあまりに勝手な演奏を聴いたせいで、ソードードドー、ソーレーシドーというメロディが一瞬思い出せなくなった。
一生懸命に思い出してから、一応考えておいた流れで演奏。他の三人と違って、ちゃんとメロディを全部弾く。
失敗した部分もあったけど、会場は拍手喝采。
その時の演奏の録音がこれである。
「bridal_march_080420.mp3」をダウンロード
(他の三人の演奏は録音していません。)

新婦が答えを正解したかどうかは、ここでは内緒にしておこう。
ちなみに私は景品をゲットすることはできなかった。

でも景品のことはともかく、参加してとても楽しいゲームだった。
与えられた課題を、どのように読み替えていくか。
肝に銘ずるべきは、音楽の解釈以前に、ことばの解釈を深め広げていくことである。
人となりが音楽に表れる。
解釈を深め広げることは、もしかするとテキトーに解釈することと表裏一体かもしれない。
真面目さとテキトーさのバランスを、常に俯瞰しながら精進したいものだ。
しかしこういうことを考えること自体が、少し真面目な方向に傾いているかもしれない。
よし、もうちょっとテキトーに構えるように心がけよう。
と心がけているうちはまだまだなのだろう。
・・というようなことを思ったりする体験であった。


えぐりん、素敵なパーティにお招きいただきどうもありがとう。
そして、結婚おめでとう!!
お幸せにね!

by りき哉

追記(4/27)
上記のえぐりんの演奏についての文章「結婚行進曲のメロディなんて時々ちょっと顔を出すくらいで、とても自由に壊している。」というのは私の理解不足による間違いでした。
えぐりんのアレンジは、実はメロディも一応全部弾いていたとのこと。
左手はBbでずっとドローンにして、右手のメロディーはリズムだけ崩して弾いていたそうです。
えぐりんに教えてもらいました。
うーん、そうだったのか。
すごく「飛んだ」アレンジに聴こえました。かっこ良かった。

2008年4月 5日 (土)

お父さんな日々

今週はとてものんびりと弛緩した一週間を過ごしている。
ちょうど桜も咲いているタイミングで、ぽかぽか春休みの気分。

しかしそれは自分の仕事(音楽)についての話であって、切り口を変えれば、フル稼働で「お父さん」をしている、ということである。
「お父さん」としては、とてもハードな一週間を過ごしている。
息子(2歳3ヶ月)は、しゃべる文章のバリエーションも日に日に豊かになっていて、彼と一日接しているのはとても楽しいのだけど、その日の夜には彼と同様にとことんくたくたになる。
とにかく「他のこと」は一切何もできない。

そんな今週の初日、月曜日は妻子とともに友人yukko*さんの写真展(@横浜「Gallery あいお★らいと」)へ赴いた。
2005年にフォト詩集「JEWELS OF LIGHT」を拝見して以来、彼女の写真展を体験するのは初めて。

作品から受ける優しさや柔らかさのような印象は先の写真集でも持ったのだけど、今回の作品たちは、
・・・なんて絵画的なんだろう!
写真って、こんなに絵みたいに幻想的に描けるんだぁ・・!
・・と、その技法の方にも関心が向いてしまう。
(彼女はデジカメは使わずにフィルムに拘って撮影している)

彼女の「作品を作る」という獰猛なまでの姿勢を感じて、私自身にもエネルギーをチャージすることができた。

いま目前に広がっている風景を能動的に獰猛に見極めてその一瞬を切り取るという行為は、自分を取り巻くあらゆる環境音に耳を澄ましたり、あるいは一音の減衰して消えて行く瞬間に耳を澄ますという行為と、よく似ているのではないか、というようなことも頭をかすめたりした。

彼女とは話が尽きることがなさそうで、まだまだゆっくりしたかったのだが、一箇所にジッとしてることに限界がきた息子の強い意志に根負けして会場を後にする。

この日の夜、アメリカ在住の妹が息子(3歳)と娘(4ヶ月)を連れて、2年ぶりに来日した。
甥っ子と会うのは2年ぶり。姪っ子とは初の対面である。

080403cousins

二人目が生まれたばかりである妹は曰く、個人の性格や性分というのは育て方や環境によるのでなく、生まれつきのものであるということを強く確信した、そうである。

息子と甥っ子はちょうど一歳違い。
二人で一緒に狂喜しながら走り回っている様子は本当にかわいい。
これから一ヶ月以上、彼等は頻繁に一緒に遊ぶことになる。
お父さんも楽しみである。大変だけど。


金曜日の今日は仕事だったので、とても開放的な気分を満喫した。
仕事のときは育児からの開放感に浸り、子供と遊ぶときは仕事からの開放感を満喫するのだから、いずれにしても私は開放感に満たされていることになる。
幸せなことだ。(希望的思い込み)

さて明日はどこへ行こうか?
息子に訊いたら
「おっきいたんたんのって、しまんもしゃつかう」
(大きいガタンガタン(電車)に乗って、シマンモのシャツを買う)
とのこと。
このフレーズを彼はもう一ヶ月以上前から発している。
彼が何かを伝えようと発した言葉の大抵は聞き取れるのだけど、この「シマンモ」は未だに何のことなのか判らない。

ともかく、明日は電車に乗ってどこかへ出掛けることになりそうである。

by りき哉


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